大判例

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福岡高等裁判所 昭和28年(う)602号 判決

犯人が被害者着用のオーバーのポケツトから金員をすり取ろうと企て、手を差し入れ金員が在中するものと考え紙片を取り出したが、それが数枚のちり紙で金員が在中しなかつたため金員窃取の目的を遂げなかつたときは、犯人において、該ちり紙については領得の意思がないので窃盜罪(既遂)が成立することなく、金員を窃取しようとして遂げなかつた事実については、他人の事実上の支配を侵し窃盜行為に着手して遂げなかつたのであつて、通常人が外出に際し金員を所持することは一般の事例であるから、たまたま被害者が犯人の目ざした個所に金員を入れていなかつたからといい、これを以て窃盜の不能犯と論ずべきではなく同罪の未遂罪を以て断ずべきである。原判決の挙示した証拠によると、被告人は原判示飯野暁子着用のオーバーの外右ポケツトから金員を窃取しようと企て、手を差し入れ金員が在中するものと考え紙片を取り出したところそれはちり紙四枚であり金員が在中しなかつたため金員窃取の目的を遂げなかつた事実を認め得ると同時に右被害者は当時着用のオーバーの左外ポケツトに金員を入れていたため難を免れたことが認められる。さすれば被告人の右所為は前掲説示の理由により窃盜の未遂罪を構成するものといわなければならない。

(後略)

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